2026.04.03

#64 JP1/AJS3ログ対応の強化

 

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    こんにちは。ES/1 Shelty担当の飯田です。
    JP1/AJS3関連のログ取得や稼働状況の表示を、より快適にするための機能強化が複数リリースされました。
    現場で「これが欲しかった!」という声が聞こえてきそうなアップデート内容を2点ご紹介します。

     

    JP1/AJS3ログを統計データとして扱えるようになりました

    まずは1点目として、JP1/AJS3のログを統計データとして扱えるようになった新機能をご紹介します。

     

    その前に

    システムの性能管理を考えるうえで、「イベントデータ」「インターバルデータ」「統計データ」の違いを理解しておくことは非常に重要です。特に企業システムの運用現場では、これらがそれぞれ異なる役割を担いながら、性能分析の基盤を形作っています。

    イベントデータとは、ある瞬間に発生した出来事を時刻とともに記録したものです。JP1/AJS3のジョブ実行ログはその典型で、ジョブの「開始」「終了」「異常終了」などのイベントが“点”として蓄積されます。
    性能管理の観点では、これらのデータは問題の「発生契機」や「開始時刻」を把握するうえで非常に有用です。たとえば夜間バッチで遅延が起きた場合、どのジョブがどの時刻に停止し、依存関係がどのように影響したかを追跡することで、処理全体の流れを点として可視化できます。

    一方、インターバルデータは“状態がどれだけの時間続いたか”を表す情報です。典型例がCPU使用率で、「13:00〜13:15の15分間、CPU使用率が80%以上だった」といった、時間の長さ・継続性を示します。
    CPUが一瞬100%になるだけでは問題ではありませんが、高負荷が長時間続くとユーザー体感に影響します。つまりインターバルデータは、負荷の継続性を“線”として把握するための重要なデータです。
     
    統計データは、一定期間に収集されたイベントデータやインターバルデータを集約・加工して得られる二次的なデータです。平均値、最大値、95パーセンタイル値、合計値、件数分布などが代表的な指標で、ボリュームの大きい生データをそのまま扱わずに、性能の傾向を“面”として俯瞰できる点が特徴です。

     

    これまでの課題

    あるお客様より、ES/1 Sheltyに取り込んだJP1/AJS3のジョブ実行ログを月次レポートとして活用したい、というご要望をいただきました。しかし、JP1/AJS3のジョブ実行ログはイベントデータであり、データは時系列上の“点”として存在します。そのため、未集計のイベントデータをそのまま月次レポートに利用することは困難でした。

     

    今回の改善内容

    3.2.0では、JP1/AJS3のジョブ実行ログ(イベントデータ)を1時間単位で自動集計し、統計データとして扱えるように拡張しました。
    これまで“点”として記録されていたイベントデータも、時間帯ごとに集計することで、次のような“傾向分析に使えるデータ”へと変わります。
     
    • 該当の時間帯に実行されたジョブ件数
    • 正常/警告/異常終了の実行数、処理時間
    • 特定の時間帯に処理が集中していないか
     
     
    これは、インターバルデータを集計してCPUの平均値やピーク値を算出する考え方と同じです。イベントデータを統計化することで、時間帯別の負荷分布や異常発生の偏りといった、より高い視点での性能評価が可能になります。

     

    導入方法

    • ES/1 Sheltyのマネージャのバージョンを3.2.0に更新してください
    • 「運用管理」→「実行管理」→「データ集約実行管理 TSKLOG01」において、「shelty_builtin_hour_ajs_summary.flux」を有効にしてください(新規導入時は無効設定)
     
    64-1
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    実行管理

    64-2
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    データ集約実行管理

     

    活用シーン

    統計データの生成は、上記設定を有効化するだけで自動的に実行されます。データエクスプローラー、統合ダッシュボード、相関分析、閾値監視などで監視対象を選択する際、カテゴリから以下のいずれかを選択します。
    • AJS稼働状況(システム単位)
    • AJS稼働状況(ジョブネット単位)
     
    選択できる対象データは以下となります。
    • 総ジョブ件数
    • 終了ジョブ件数
    • 正常終了/警告終了/異常終了/未終了ジョブ件数
    • 総ジョブ処理時間
    • 総ジョブ処理時間(正常終了/警告終了/異常終了)
    • ジョブネット開始遅延件数
    • ジョブネット終了遅延件数

    以下のサンプルのように統合ダッシュボードを作成し、右上のタイムレンジを「先月」に設定して保存しておくことで、毎月のジョブ実行状況を自動的に月次レポートとして利用できます。
     
    64-3
    64-3

    統合ダッシュボードサンプル

     

    JP1/AJS3ログのジョブネット遅延ログに対応しました

    続いて、ジョブネット遅延ログの取り込みと可視化に対応した改善内容をご紹介します。

     

    これまでの課題

    JP1/AJS3のジョブ実行ログの取り込みでは、これまでは正常終了、異常終了、警告終了、未終了の件数、処理時間といった実行結果が対象となっており、ジョブネットの遅延状況レコード(N008 / N009)は取り込み対象外となっていました。

    そのため、
    • いつ遅延が発生したのか
    • どのジョブネットが遅延しているのか

    といった視点での分析が行いにくい課題がありました。

     

    今回の改善内容

    JP1/AJS3のジョブネット作成時に開始遅延・終了遅延の検知設定を有効にしておくことで、遅延レコード(N008:開始遅延、N009:終了遅延)が出力されます。今回のアップデートにより、この遅延レコードをES/1 Sheltyに取り込み、開始・終了レコードと併せて可視化できるようになりました。
     
    新たに取り込み対象となったデータ
    • ジョブネット開始遅延件数
    • ジョブネット終了遅延件数

     

    64-4
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    対象フィールド

     

    本機能のメリット

    運用中のジョブネットは、基本的に「毎日同じ時刻に開始・終了する」ことが期待されます。しかし実際には、データ量や業務負荷によって終了時刻が遅れることは珍しくありません。あるお客様からは、「月末になるとだんだん終了が遅くなるんですよね」という声もありました。
    本機能をご利用になる前提として、JP1/AJS3側で開始遅延・終了遅延の検知設定を行い、遅延状況をログとして出力するようにしてください。特に重要なジョブネットでは、この設定を有効にしておくことが望ましい運用です。

     

    ES/1 Sheltyでは、これらの遅延レコードを統計データとして取り込み、“いつもと違う動きが起きていないか”を継続的に監視・分析できるようになりました。
     

    活用シーン

    遅延関連の項目を月次レポート化する統合ダッシュボードを作成することで、
    • いつ遅延が発生したか
    • どのジョブネットで発生したか
    • 異常終了と遅延に関連はあるか
     
    といった情報を一目で把握できます。異常や遅延が発生していない場合は「No Data」と表示され、発生している場合は該当ジョブネットがグラフ上にプロットされます。
     
    統合ダッシュボードの構成例
    • 正常系(遅延なし・異常なし)ダッシュボード
    • 異常・遅延系ダッシュボード
     
    この2つを分けることで視認性が向上します。さらに、ダッシュボード間をリンクで行き来できるようにすると、月次レポートとして非常に使いやすくなります。この機会にぜひ統合ダッシュボードをご活用ください。
    64-5
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    統合ダッシュボードサンプル

     

    最後に

    ES/1 SheltyはJP1/AJS3ログの取り込みにおいて、対象データの追加や統計データ化により従来のジョブスケジュールマップだけでなく、多彩なレポートを作成できるようになり現場で使いやすい運用支援ツールへと進化しました。
    今後もES/1 Sheltyは、運用担当者の「こうだったらいいのに」を形にしていきます。ぜひ今回のアップデートをご活用いただき、運用の質とスピードをさらに高める一歩としてお役立てください。ご不明点や社内展開に向けたサポートが必要な場合は、いつでもご相談ください!
     

     


     
    本文中に記載されている製品名、サービス名は、各社の登録商標または商標です。

     

    執筆者

    T.I. 

    営業技術本部 カスタマーサクセス統括部 ES/1技術サービス部 部長

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